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EVOJapan2018の敗者側トーナメントで"再戦率"が高かった理由

この記事で言いたいことは以下の3つです。

  • ダブルイリミネーション形式のトーナメントでは勝者側で一度戦った相手と敗者側でもう1回当たる(再戦)することがある。しかし、トーナメントの組み方によって、再戦が起こる確率が大きく変わる
  • EVOJapan2018では、EVO2017や他の大型大会で用いられている「再戦率を減らすことができるトーナメント方式」が採られていなかったため、再戦率が高かった。
  • 実際に「再戦率を減らすことができるトーナメント方式」を採用するかどうかは運営コストを考えながら決めてほしい

再戦率がどのくらい高かったのか

次の表は、再戦数が低くなる方式が採られたEVO 2017と、採られなかったEVOJapan2018を比較したデータです。(棄権だった選手は除いています)

参加者数 試合数 再戦数 再戦数 / 試合数
BBCF (EVO 2017) 487 958 29 3.03%
BBCF (EVO Japan 2018) 477 891 63 7.07%
GGXrd REV 2 (EVO 2017) 806 1589 8 0.50%
GGXrd REV 2 (EVO Japan 2018) 946 1858 85 4.57%
KOF XIV (EVO 2017) 365 724 11 1.52%
KOF XIV (EVO Japan 2018) 323 615 55 8.94%
SFV (EVO 2017) 2575 5081 66 1.30%
SFV (EVO Japan 2018) 1610 3138 193 6.15%
Smash 4 (EVO 2017) 1453 2839 26 0.92%
Smash 4 (EVO Japan 2018) 512 994 80 8.05%
TEKKEN 7 (EVO 2017) 1254 2479 50 2.02%
TEKKEN 7 (EVO Japan 2018) 652 1246 71 5.70%

参加者の数がほぼ同じだったBBCF、GGXrd REV 2、KOF XIVを見ると分かりやすいですが、EVOJapan2018の方がそれぞれ3倍から10倍ほど再戦数が多くなっています。また、EVO 2017の方が参加者数が多かったSFV、Smash 4、TEKKEN 7ですら再戦数はEVOJapan2018の方が上回っており、全体の試合数と再戦数との割合を見てもEVOJapan2018の方が数倍高くなっています。

なぜEVO 2017は再戦が少ないか

理由1. プールの決勝を行わない

敗者側での再戦が最も起こりやすい場所は、プールの敗者側決勝です。EVO 2017やその他の大型大会(私が知っているのはスマブラ4だけですが)では、プールでの敗者側決勝を行わず、敗者側決勝進出者2名を次のラウンドで離れた位置に配置することで再戦率を下げています。つまり、1つのプールから次ラウンドへ3名が進出します。少しトリッキーな方法ですが、今回トーナメント管理に使われたsmashggというサイトではサポートされています。(おそらくchallongeには無いと思います。)

実際に再戦が回避された実例を上げます。次の画像はEVO 2017のスマブラ4部門、プールH200のスクリーンショットです。

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Nietono選手とMr.E選手に注目してください。勝者側準決勝で、Mr.E選手がNietono選手を下して勝者側決勝に進み、その後勝者側決勝でZeRo選手に破れて敗者側へ送られています。一方で、Nietono選手はMr.E選手に負けた後順調に勝ち上がり敗者側決勝へコマを進めています。もしここで敗者側決勝を行っていたら、Mr.E選手とNietono選手の再戦となっていましたが、敗者側決勝を行わず、この2人を次のラウンドで離れた位置に配置することで、再戦を回避しています。今回の場合は、2人が敗者側で7連勝しなければならない場所に配置されるため、両者が再戦する確率は低いと言えるでしょう。

Evo 2017 | Brackets

理由2. 1つのプールの人数が多い

うまく言葉で説明できないのですが、人数が多くなれば敗者側トーナメントも大きくなり、勝者側の同じサイドで負けたプレイヤー同士が離れた場所に配置される(=再戦するために必要な勝利数が増える)ので、プールの人数が多くなればなるほど再戦率が下がります。(この説明、正しいかどうかが自信が無いので間違ってたら教えてください…)。

EVO 2017では1つのプールに16人〜24人ほどでしたが、EVOJapan2018では8人のことが多かったようです。

しかし、プールの人数が多くなると管理が大変になるため、こちらの方法では運営コストが増えてしまうのがデメリットです。

そもそも再戦の何が問題か

(この章は個人の感想です)

個人的には、敗者側で再戦することそのものはそこまで悪いことではないと思っています。ただ、個人的には「早すぎる再戦」はできるだけ避けたほうがいいと思っています。8人のプールで敗者側決勝を行う形式だと、勝者側トーナメントであるプレイヤーに負けた後、敗者側で2勝するとすぐに再戦、というケースが多く発生します。同じ再戦でも、グランドファイナルでの再戦や、敗者側で5連勝くらいのルーザーズランをしてからの再戦と、プールの敗者側で2勝してからすぐ当たるのでは気持ち的に大きく違うと思います。こういったケースは、敗者側決勝を行わないことでかなり減らせるので採用してほしいなぁというのが個人的な思いです。

一方で、プールの人数を増やすことについては、「できればやってほしいけど、無理はしないで欲しい」というスタンスです。実際、EVOJapan2018はかなり会場が狭く人口密度が高かったので、1つのプールで16人〜24人を管理するのはリスキーだったと思います。参加者目線だと、EVOJapan2018では初開催ということもあってか、対戦相手の取り違いという「あってはならないこと」だけは起こらないように、進行スタッフが最新の注意を払っていたなという印象で、プールの人数を抑えたのもそれが理由なのかと勝手に考えています。対戦相手の取り違いなんて起こらないと思われがちですが、あれだけの規模だとたまに起こってしまいます。何事もそうですが、ミスを起こしたときにはめちゃくちゃ叩かれるのに対して、ミスを未然に防ぐための努力は過小評価されがちなので、この点は大きく評価したいです。

結論のようなもの

ふわっとした終わり方になっていまいましたが、この記事ではトーナメントの組み方によって再戦率が大きく変わるということを周知できればそれで十分だと思います。数百人規模のトーナメントを開こうとしている運営スタッフの方々には頭に片隅にでも入れていただきたいです。

(余談) リベンジ率はどうだったか

ここからは完全に僕の趣味ですが、再戦のうちどのくらいリベンジが起こったかが個人的に気になったので、表に追加しました。

参加者数 試合数 再戦数 再戦数 / 試合数 リベンジ率
BBCF (EVO 2017) 487 958 29 3.03% 41.38%
BBCF (EVO Japan 2018) 477 891 63 7.07% 31.75%
GGXrd REV 2 (EVO 2017) 806 1589 8 0.50% 37.50%
GGXrd REV 2 (EVO Japan 2018) 946 1858 85 4.57% 43.53%
KOF XIV (EVO 2017) 365 724 11 1.52% 18.18%
KOF XIV (EVO Japan 2018) 323 615 55 8.94% 27.27%
SFV (EVO 2017) 2575 5081 66 1.30% 43.94%
SFV (EVO Japan 2018) 1610 3138 193 6.15% 39.90%
Smash 4 (EVO 2017) 1453 2839 26 0.92% 26.92%
Smash 4 (EVO Japan 2018) 512 994 80 8.05% 21.25%
TEKKEN 7 (EVO 2017) 1254 2479 50 2.02% 36.00%
TEKKEN 7 (EVO Japan 2018) 652 1246 71 5.70% 32.39%

データセットが小さいので、このデータを基に「このゲームはリベンジが起こりやすい」と断言するつもりはありませんが、同じゲームではEVO 2017とEVOJapan2018でおおよそ同じリベンジ率になっていておもしろいですね。私の専門であるスマブラ4について語らせていただくと、スマブラ4ではキャラ相性が強く出るゲームなので、再戦しても使用キャラの相性差を覆すことが難しいため、リベンジ率が低くなったのだと勝手に解釈しています。みなさんのプレイしているゲームではどんな印象を持たれたでしょうか。